被ばく医療総合研究所と保健学研究科の研究者らによる、新しく発見された高自然放射線地域での線量評価と高濃度化要因に関する論文が、環境科学分野において国際的にインパクトが高いジャーナルであるScience of the Total Environment誌(2019年インパクトファクター:6.551)に掲載されました。
床次眞司教授が率いる研究グループは、大学間連携先であるインドネシア原子力庁との国際共同研究によって、スラウェシ島マムジュ地域住民のラドンによる内部被ばくや大地放射線による外部被ばく線量の実態を初めて明らかにしました。さらに、調査対象地域のラドンの高濃度化要因についても検討しました。本調査には、電力中央研究所、広島大学、北海道科学大学、琉球大学などの国内研究機関や、同じく大学間連携先であるアイルランド環境保護庁の研究者も参画しています。
得られた重要な成果は以下のとおりです。
1) 屋内外および飲料水中のラドン、大地放射線の調査結果から、当該地域住民の年間実効線
量の中央値は27 mSvに相当し、これはICRPが勧告している放射線業務従事者の実効線量
限度である年間20 mSvを超える被ばくを多くの住民が受けている可能性を示唆した。
2) 屋内と屋外のラドン濃度を連続的に測定した結果、それらの濃度レベルと変動パターンは
同様であり、これはおそらく本研究分野では初めての実測例である。この現象は、一般に
言われている屋内空気の換気ではラドンによる内部被ばく線量の低減にはつながらないこ
とを意味する。
3) 大気中ラドン濃度の鉛直分布の解析結果より、地表面から数m程度の生活圏において夜間
の大気が非常に安定し、その結果、夜間の屋内外ラドン濃度が急激に上昇する可能性が示
唆された。さらに、当該地域の地形が摺鉢状になっていることも高濃度化の要因の一つと
考えられる。
【掲載論文の要旨】
Masahiro Hosoda, Eka Djatnika Nugraha, Naofumi Akata, Ryohei Yamada, Yuki Tamakuma, Michiya Sasaki, Kevin Kelleher, Shinji Yoshinaga, Takahito Suzuki, Chanis Pornnumpa Rattanapongs, Masahide Furukawa, Masaru Yamaguchi, Kazuki Iwaoka, Tetsuya Sanada, Tomisato Miura, Kusdiana, Dadong Iskandar, Eko Pudjadi, Shinji Tokonami. A unique high natural background radiation area –Dose assessment and perspectives. Science of the Total Environment. 750(1): 142346 (2021).
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0048969720358757