中国衛生部輻射防護研究所を訪問(放射線物理学部門)

中国衛生部輻射防護研究所を訪問(放射線物理学部門) 新着情報

 2017年9月17日から19日にかけて、放射線物理学部門の床次眞司教授が本研究所の連携協定先である中国衛生部輻射防護研究所(北京市)を訪問し、これまでの研究成果の紹介と共同研究の計画について意見交換をしました。床次教授からは現在進めている研究課題の進捗状況やこれまでの成果などを紹介しました。特に緊急時に多地点で設置できるモニタリング装置の開発には大いに関心を持って聞いていました。一方、輻射防護研究所の活動計画についても紹介していただきました。中国では急速に近代化が進み、新しい家屋が次々に建てられて、その建材として軽量コンクリートを使っているとのことでした。その原料には火力発電などで使われた石炭の燃えかす(残渣)を再利用する取り組みが進められているそうです。その残渣にはウランやトリウムなどの天然起源の放射性物質が含まれていますが、その量はあまり多くありません。しかしながら、空隙の多い軽量コンクリートから散逸するラドンやトロンの量が多いために、全国規模で中国国内の屋内ラドン濃度が上昇傾向にあるとのことでした。そこで、2020年から全国規模の屋内ラドン濃度調査が開始されるとのことで、技術的な支援を依頼されました。本学には海外機関で校正された基準器とラドンを曝露できる装置があります。これらを使って測定データの信頼性を担保していく予定です。短い滞在ではありましたが、充実した訪問となりました。
 北京に移動する前、床次教授は上海で開催された国際電気標準会議(IEC)に出席し、専門委員として作業部会で国際規格に関する議論をしました。現在床次教授がプロジェクトリーダーを務める、新規に開発中の規格の内容について多くの時間を割きました。床次教授は来年5月以降の投票に向けてドラフトを完成させる予定です。



輻射防護研究所主催のセミナー講演の様子


施設見学において現在進行中の研究の説明を受けている様子
(前に並んでいるのは軽量コンクリートのサンプル)