放射線化学部門の楊国勝(YANG GUOSHUNG)研究機関研究員らの研究チームが環境試料中のU-236の新たな分析法を開発

放射線化学部門の楊国勝(YANG GUOSHUNG)研究機関研究員らの研究チームが環境試料中のU-236の新たな分析法を開発 新着情報

 放射線化学部門研究機関研究員の楊国勝(YANG GUOSHUNG)博士らの研究チームは,DGAレジンによる分離・精製とトリプル四重極誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS/MS)を組み合わせた,環境試料中の極微量のU-236濃度とU-236/ U-238同位体比の新たな分析法を開発し,Analytica Chimica Acta誌に発表しました。
 ウラン同位体のひとつであるU-236(半減期:2,342万年)は,天然には存在せず,軽水原子炉内でU-235と中性子との核反応(n,γ)で生成する人工放射性核種であります。原子炉でU-235を燃焼させた後の使用済核燃料には,約0.4%のU-236が含まれています。また,U-235とU-238は天然放射性核種であり,土壌中には約3ppmと比較的多量のU-238が含まれています。さらに,U-235の天然存在度は0.7204%であり,原子力発電所で使われているウラン燃料は,核分裂性のU-235が約4%,非核分裂性のU-238が約96%であります。そのため,U-235/U-238同位体比から原発事故による影響を推定することはかなり難しい現状です。しかし,もともと天然には存在しないU-236は,原発事故などによるウランの汚染状況を把握するのに有効な放射性核種であります。
 今回,四重極電場を2個直列に配置した誘導結合プラズマ質量分析装置を用いることにより,U-236濃度とU-236/U-238同位体比の新たな分析法を開発しました。

なお,発表した論文は,以下のURLからフリーでダウンロードできます(2016年12月11日まで)。
http://authors.elsevier.com/a/1TwKGlYfMC99