放射線生物学部門・有吉健太郎助教らの研究チームが,人工的に染色体異数化を引き起こした細胞においてゲノムの不安定化が生じることを発見

放射線生物学部門・有吉健太郎助教らの研究チームが,人工的に染色体異数化を引き起こした細胞においてゲノムの不安定化が生じることを発見 新着情報

放射線生物学部門・有吉健太郎助教らの研究チームは,微小核融合法を用いることで、正常ヒト細胞に染色体を移入し、人工的に染色体異数化を引き起こした細胞においてゲノムの不安定化が生じることを発見しました。正常ヒト細胞(ヒト乳腺由来上皮細胞; MCF10A)にヒト8番染色体、およびヒト22番染色体をそれぞれ移入した細胞株を作成し、親株と細胞形質を比較したところ、染色体異数化細胞では、細胞老化の促進、微小核や架橋、DNA損傷が高頻度で発生し、また、細胞内参加ストレスの上昇、オートファジー活性の上昇等の異常形質がみられました。また、染色体異数化細胞にオートファジー阻害剤を処理したところ、微小核・DNA損傷頻度、細胞内参加ストレスの更なる上昇がみられました。これらの結果から、染色体異数化はゲノムの不安定化を引き起こす原因となり、また、染色体異数化によって生じたゲノム不安定性はオートファジーによって抑制されていることが考えられます。がんは遺伝子の異常によって引き起こされることは、多くの研究から判明している事実です。一方で、染色体の異数化は、ほぼ全てのがん細胞で見られる現象でありながら、がんとどのように結びついているのか、不明な点が多くありました。今回の発見は、染色体異数化が引き金となってゲノムが不安定化することで、細胞ががん化する可能性を示唆する結果と言えます。

本研究成果は、生物学の専門雑誌『Mutation Research – Fundamental and Molecular Mechanisms of Mutagenesis』誌に発表しました。
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0027510716301063