染色体線量評価技術の改良に新たな知見(放射線生物学部門)

染色体線量評価技術の改良に新たな知見(放射線生物学部門) 新着情報

 被ばく医療総合研究所放射線生物学部門と保健学研究科生体検査科学領域およびむつ総合病院の共同研究の成果がInternational Journal of Radiation Biology誌に掲載されました。

 放射線によって誘発される染色体異常として、1本の染色体上に2つの動原体が見られる二動原体染色体(Dic)や染色体が切断・修復後にリング状となる環状染色体などがある。これらの染色体異常は放射線被ばくに対する特異性が高く、被ばく線量と高い正の相関を示すことが知られている。被ばく事故における被災者を対象にDicを指標とした線量評価を行う場合、一般的に1000細胞以上の解析可能な分裂中期像が必要となる。このような多数の分裂中期像を得るためには、採血方法、血液の輸送、リンパ球の培養における様々な条件が極めて重要となることから、本研究では、採血時の抗凝固剤、採血後の保存・輸送温度がリンパ球の分裂頻度に及ぼす影響を検討した。その結果、ヘパリン血を室温保管した場合において、採血後6時間から72時間までは分裂頻度が20–30%に保たれていたが、冷蔵保存をした場合は、室温で保管した婆に比べて5–10%低下していることが判明した。興味深いことに、細胞増殖が乏しいことから用いるべきではないとされているEDTA(抗凝固剤の一種であるethylenediaminetetraacetic acid)血においても冷蔵保管した血液の場合は、一度血液を洗浄し、EDTAを除去することによって、72時間まではヘパリン血と同程度の分裂頻度が得られることを新たに発見した。これらの結果は、染色体線量評価に資する細胞培養のための血液の搬送に関して、重要な知見である。

【掲載論文】
Fujishima Y, Kanahama S, Hagino S, Natsubori S, Saito H, Azumaya A, Ariyoshi K, Nakata A, Kasai K, Yamada K, Mariya Y, Yoshida MA, Miura T:
Influence of anticoagulants and storage temperatures on blood counts and mitotic index of blood samples collected for cytogenetic biodosimetry. International Journal of Radiation Biology, 2019, Vol. 95, No. 2, 186–192,
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/09553002.2019.1539882







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