放射線生物学部門・有吉健太郎助教らの研究チームは、野生動物のアカネズミ(Apodemus speciosus)の胎児由来細胞を作成し、放射線感受性を調べるとともに、放射線によるバイスタンダー効果に関する研究を、Radiation & Environmental Biophysics誌に発表しました。
福島原子力発電所の事故以降、放射線生物学部門では、野生動物における放射線影響調査を行ってきました。中でも、アカネズミにおける影響調査は2009年から開始して以来、毎年継続してサンプリングを行っています。
今回の報告では、アカネズミの胎児由来線維芽細胞を樹立するとともに、アカネズミ細胞に対する放射線感受性試験を行いました。また、被ばくした細胞で認められる効果(DNA損傷)が、被ばくしていない細胞で認められるバイスタンダー効果を、アカネズミの細胞で確認しました。これまでバイスタンダー効果の研究は、ヒトのがん細胞や実験動物由来の細胞での報告がほとんどであり、今回の報告は、野生哺乳動物由来の細胞では初の報告となります。今回の結果は、アカネズミの放射線影響を考慮する上で重要な基礎的知見であるとともに、放射線の野生動物への影響解析を行う上で非常に重要であると考えられます。
[掲載論文]
Ariyoshi K., Miura T., Kasai K., Nakata A.,Fujishima Y., Yoshida MA. (2018) Radiation-induced bystander effect in large Japanese field mouse (Apodemus speciosus) embryonic cells.
Radiation and Environmental Biophysics, https://doi.org/10.1007/s00411-018-0743-8