浪江町復興支援活動を通じて得られた成果を日本保健物理学会誌に2件発表(放射線物理学部門)

浪江町復興支援活動を通じて得られた成果を日本保健物理学会誌に2件発表(放射線物理学部門) 福島県浪江町支援活動

(1)浪江町内における空間放射線量率の変動
 浪江町内における空間線量率を2011年9月、2014年8月、2015年9月に自動車走行サーベイにより評価しました。空間線量率の分布図から、いずれにおいても沿岸域(特に居住区域周辺)において低い線量率が分布しておりました。一方、森林地域において高い線量率が観察されました。一日外にいるという保守的な外部被ばく線量の推定法では、2011年、2014年、2015年の年間実効線量の平均値はそれぞれ24、8および6 mSvと評価されました。2014年と2015年におけるこれらの値は2011年から66、75%減少していました。しかしながら、住民の帰還に向けて放射線モニタリングは今後も継続していくべきであると考えております。

2011年、2014年、2015年の浪江町内の空間線量率の分布

 本結果の詳細は下記論文に記載されております。
Chanis PORNNUMPA, Kazuki IWAOKA, Naofumi AKATA, Masahiro HOSODA, Atsuyuki SORIMACHI, Shinji TOKONAMI. Investigation of absorbed dose rate in air by a car-borne survey in Namie Town, Fukushima Prefecture. Japanese Journal of Health Physics. 51(2): 115-121 (2016).


(2)放射線のリスク認知に関する調査
 浪江町民と青森県民を対象とした放射線の基礎知識に関するアンケート調査を行い、その結果を比較しました。表に示す通り、本調査の対象となった浪江町民と青森県民は自然界からの放射線に年間1 mSv以上被ばくしていると認識していることが分かりました。しかしながら、1 mSvの線量で健康影響が出ると認識している一般市民もおり、特に浪江町民ではその傾向が顕著でした。また、浪江町民は人工の放射線と自然の放射線の健康影響に違いがあると認識していました。事故後に生活環境の変容等を余儀なくされている浪江町民にとって放射線に対する認識に大きな影響を及ぼしていることが示されました。

質問項目 回答 浪江町民 青森県民
Q1: 日本人は1年間の平均で自然界からの放射線に1mSv以上被ばくしていると思いますか? はい/いいえ 78 (62.4%) 77 (65.8%)
Q2:人工の放射線と自然界にある放射線には体に与える影響は違うと思いますか? はい/いいえ 76 (60.8%) 46 (39.3%)
Q3:内部被ばくと外部被ばくでは同じ線量でも体に与える影響の大きさは違うと思いますか? はい/いいえ 95 (76.0%) 95 (81.2%)
Q4:放射線の被ばくにより健康に影響が出るのはどれくらいだと思いますか? ( ) mSv 1mSv 27 (21.6%)
20mSv 15 (12.0%)
No answer42 (33.6%)
100mSv 29 (24.8%)
10mSv 11 (9.4%)
No answer14 (12.0%)
Q5:放射線による健康影響とは、具体的にどのような症状であると思いますか? 自由記述 がん・発がん41 (40.2%)
甲状腺がん・甲状腺への影響
20 (19.6%)
白血病9(8.8%)
がん・発がん51 (29.0%)
甲状腺がん・甲状腺への影響
19 (10.8%)
白血病14 (8.0%)
Q6: 日常生活において放射線に関して疑問や不安に思っていることはありますか? はい/いいえ 77 (61.6%) 40 (34.2%)

本結果の詳細は下記論文に記載されております。

工藤ひろみ、床次眞司、細田正洋、岩岡和輝、葛西幸彦: 一般市民の放射線の基礎知識に関するアンケート調査-放射線の基礎知識の講演会に参加した浪江町民と青森県3市民の比較から-. 保健物理. 51(2): 92-97 (2016).




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